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511 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/23(木) 09 56 43.27 ID GaHPWcsNO 京介「(カチャ)ただいまー」 桐乃「おかえり!! 京介「うわびっくりした!お前なに玄関で待ち構えてんの!?」 桐乃「いいじゃんそんなん!!ねねそんな事より、今日はキスの日なんだって!知ってた!?ねーねー知ってた!?」 京介「あ、ああ。昨日そんなん聞いたような…」 桐乃「やばいよねー。超やばいよねー。特にシスコンの兄貴がいる家庭はやばいよねー」 京介「?なんだかよくわからんが、ほれ」 桐乃「ん?」 京介「帰りに買ってきた。お袋に渡しといてくれ」 桐乃「…なにこれ?」 京介「なにって、キスだよ鱚」 桐乃「へ?」 京介「しかし大仰だよな『鱚の日』なんてよ。大方旬だとかなんとかなんだろうが迷惑な話だ」 桐乃「…」 京介「学校帰りの学生に買わせるなっての」 桐乃「…えーえーわかってましたよ。こいつだし。せいぜいこんなオチだと…」 京介「あ、桐乃」 桐乃「なによっ!?」 京介「(ちゅー)ぷは。わり。ただいまのチュウ忘れてた」 桐乃「!!?///」 ----------
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929 名前:【SS】:2014/07/07(月) 16 23 53.18 ID 2oNt78YAI SS『初夏のねがいごと』 日増しに強くなっていく日差しに、真夏の到来を感じるような、そんな初夏のある日の午後。 大学から帰ってきた俺は、冷蔵庫から取り出した麦茶を飲んで一息ついたあと、いつものように階段を上がって自分の部屋の扉をかちゃりと開いた。 「あ、おかえりー。」 、、、。 説明しよう。桐乃が俺のベッドに寝転がってゲームをしていた。 「えと、、、何やってんの?」 「ゲーム。見てわかるっしょ?」 「そうじゃなくてだな。なんでわざわざ俺の部屋で、俺のベッドに乗っかってゲームやってんのかって聞いてんだが?」 「はぁ?別にいいでしょ?」 「、、、この部屋、クーラーもないのに暑くねーの?」 そう口にしたあとで言うのもなんだが、、、自分で言ってりゃ世話ねぇな、ったく。 「あたしの部屋、クーラーが効きすぎて、ちょっと寒くなっちゃったの。だからこの部屋に来てたってワケ。」 、、、それって、扇風機を強にして風にあたりながら言うセリフじゃないだろ。 「じゃあ、俺は暑いから、お前の部屋に入っててもいいか?」 「ダメ。」 あいかわらず理不尽な妹様である。 しかたなく、俺は扇風機を自分に向ける。 「ちょっと!扇風機、自分にだけ向けないでよ!暑いじゃん!」 「寒かったんじゃないのか?」 「っ!もう寒くなくなったの!悪い!?」 やれやれ。 俺は扇風機を首振りモードに切り替えて、机に荷物を置きつつ椅子に座る。 「ふぅ。」 「ねぇ。」 一息つくやいなや、桐乃が声をかけてくる。 「なんだ?」 見ると、さっきまで寝転んでやっていたゲームを枕の横に置いて、ベッドの上にぺたんと座り込むような姿勢になっていた。 「あのさー、今日って七月七日なんだけどぉ。あんた知ってた?」 「あ、ああ。知ってるよ。それがどうかしたのか?」 「ふーん、へぇー、知ってたんだ。」 いつものようにニヤニヤしながらそう言ってくる。 「んで?」 そしてこれも、すでに恒例となった問いかけだ。 「、、、七夕だろ?」 「そ。短冊にねがいごとを書いて笹に飾ったりすんだよね~。」 「つってももう、短冊を飾る年でもないだろ?それがどうしたってんだ?」 「ふひひー♪あんたさー、商店街に出してあった笹にねがいごと書いた短冊つけたっしょ?」 「なっ!なぜそれを知っている、、、!」 「やっぱしw帰りに商店街を通ったときに笹にたくさん短冊が飾ってあんの見てさー。なんか懐かしくなって、その短冊を眺めて見てたワケ。」 「ぐっ!」 「そしたらその中に、こんなねがいごとが書いてあったんだよねーw」 「『妹がいつまでも幸せでありますように。』ってw」 「そ、それが何で俺のだって分かる?他の誰かが書いたのかもしれねーだろ?」 「裏に『京介』って書いてあったし。」 、、、バカだろ?俺?せめてイニシャルとかにしとけよ。 「ひひひ、シスコンw」 「うっせ。」 それを言うためにわざわざ、この暑い部屋のなかでずっと待ってたおまえもおんなじだと思うぞ? ------------------------------------- そして、その夜。 「そう言えば、今日は七夕ね。」 家族全員が揃う食事の席で、お袋がそう切り出した。 一瞬、俺と桐乃の箸が止まる。 「昔はこの時期になるといっつも桐乃が、笹を飾ってって言い出してたんだけどねぇ。いつ頃からかしら?そう言わなくなったのって?」 「べ、別にいいでしょ?お母さん。あたしだっていつまでも小っちゃい子供じゃないんだからさ。」 「でもあんた、結構大きくなっても言ってたような気がするんだけど、、、。」 「き、気のせいだってば。」 「そうかしら?まあいいわ。それで飾った笹に二人でねがいごと書いてたわよね、あんたたち。」 「そ、そうだっけ?」 「そうよー、京介。でもあんたはどうも七夕のねがいごとの意味を勘違いしてたようだったんだけどね。」 「え?どういう意味だ?」 「あんたのねがいごとって、いっつも『ミニ四駆が欲しい』とか、そんなのばっかりだったから。」 、、、幼き日の俺よ、それはクリスマスのお願いだ。織姫と彦星は、プレゼントはくれないぞ。 「ばかじゃんw」 桐乃がそう言ってとなりで笑う。 「で、桐乃はいっつもおんなじねがいごとだったわよね。」 「へ?」 「確か、『お兄ちゃんとずっと」 「わーっ!わーっ!わーっ!!!お、お母さん!そ、そんなの昔のことでしょ!」 「ふふふ、懐かしいわねー。ねぇ、お父さん。」 そう言って笑うお袋の横で。 「ふっ。」 晩酌をしながら、微かに微笑む親父なのだった。 ------------------------------------- そして、その翌日の朝。 大学に向かう途中の商店街で。 「まだ飾ってあんのか。」 そう言って、笹に結びつけてある自分の短冊を見た俺は。 同じところに寄り添うように結びつけられた、もうひとつの短冊を見つけたのだった。 その短冊にはこう、書かれていたよ。 『お兄ちゃんとずっと一緒にいれますように-きりの』 Fin かしゃ。たたたたたっ、、、。ぴっ。 宛先 桐乃 件名 ひひひ こんな短冊見つけたんだけど? 、、、ぴろりん。 差出人 桐乃 件名 Re ひひひ ちょ!な、なんでまだ飾ってあんのよ! 、ぴろりん。 差出人 桐乃 件名 Re ひひひ ってか、あたしじゃないかんね! ------------------------------------- そして、そのメールのあとで気付いたのだが--- ふと、その短冊の裏を見てみると。 そこに小さく小さくこう書かれていたのだった。 『ねがいをかなえてくれてありがとう-桐乃』 ----------
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83 名前:反転銃【SS】1/2[sage] 投稿日:2011/03/25(金) 01 13 32.12 ID BnGnzQsA0 [1/2] 説明しよう! 今、俺の手にある近未来チックな光線銃。 これはなんと、光線を当てた相手の好き嫌いが反転してしまうという未来道具なのだ! おぉっと、どこから手に入れたなんて野暮な事は言いっこなしだぜ。 で、誰に使うのかって? そりゃもちろん……。 「アンタそんなトコで何突っ立ってんの? 邪魔なんですケド」 この小生意気な妹・桐乃に使って、お兄ちゃん大好きな可愛い妹に変えてやるぜ! ……あ、もちろん後で治すから、そんな冷たい目で見ないでくれ。ちょっとした悪戯だ。 「ちょっと、聞いてんの?」 桐乃は相変わらずの蔑んだ目でこっちを見ている。 だがそんな目をしていられるのも今のうちだぜ……くらえ! ビーーーーーーーッ 「きゃっ!」 よし当たった! さあ、効果のほどは……? 「……ウザ。何してんの? マジ迷惑なんだけど」 あれ? なんで? 普段と変わらない……いやむしろ悪化しているような。 ええいもう一度だ。 ビーーーーーーーッ 「ちょっ、ほんと何してんのアンタ。意味わかんないんだけど」 ビーーーーーーーッ 「……だからウザいって言ってんでしょ? 何? 耳聞こえなくなったの?」 ビーーーーーーーッ 「ちょっと、さっきから子供みたいな事して……。ア、アンタそんなにあたしに構って欲しいワケ?」 な、何故だ……。何度やっても変化が見られない。 なんでだ? 故障か? 不良品なのか? そんな事を考えているうちに桐乃が詰め寄ってくる。 「何無視してんのよ! 大体なに? その子供っぽいデザインのオモチャみたいなの」 「あ、ああ。これな……」 もう計画はご破算のようだし、素直に白状する。 「うわ、マジありえない。それであたしをエロゲみたいな妹にしようっての? バッカじゃないの?」 「いやその、ほんの悪戯心でな……いや悪かったよ」 「……でも、そっか。それでさっきは、あんな……」 ん? 桐乃は何か思うところがあるのか、考え込むような仕草を見せる。 と思いきや、 84 名前:反転銃【SS】2/2[sage] 投稿日:2011/03/25(金) 01 14 08.74 ID BnGnzQsA0 [2/2] 「ちょっとソレ貸して」 「あっ、おい!?」 「ふっふーん。これでおあいこでしょ?」 そうして俺に光線銃を向けて……。 ビーーーーーーーッ その瞬間。 俺の中で何かが劇的に変化した。 なんだ? この沸き上がる感情は。 この……この……これは……。 「どう……かな?」 目の前には、愛しい妹がこちらを覗き込むような仕草をしている。 なんて……なんて可愛いんだ! 思わず力一杯抱き締める。 「ちょっ! な、な、なにして……」 「ああ、なんで今まで気付かなかったんだ! 妹が……こんなに可愛いだなんて!」 「え、マ、マジ? ほんとに?」 「本当だとも! お前は俺の愛しい愛しい、この世で唯一無二の妹だ! 愛してるぞ!」 「あ、うあ、あ……」 「ああ妹って良いなぁ……。妹ってだけで、もう他に何もいらないぜ……」 「………………は?」 「む、どうした? 我が愛しい妹よ」 「ねえ、あくまで仮定の話だけど……もしあたしが妹じゃなかったらどうなの?」 「何を言うんだ! 妹ってのは最重要のファクターだろう! それがなかったら全てが色褪せる……妹好きのお前なら分かるだろう?」 「…………ウザ」 ビーーーーーーーッ あ、あれ? 俺は何をやって……。 視線を下ろすと、なにやら不機嫌そうな顔の桐乃が俺の腕の中に居る。 腕の、中……。 「うおわっ!」 慌ててザザザッと距離を取る。 さっきまで平気だったのが嘘みたいだ。 そんな俺の顔面にガンッ!と光線銃が投げつけられる。 「イッテエなおい!」 「……ふん。壊れてんじゃないの? ソレ」 だからって投げつけなくても良いだろ。この可愛くねえ妹様はよぉ……。 でも確かに桐乃の言う通り壊れてんだろうな。 だってさっき、好みが反転したはずなのに全然『桐乃』を好きになんてならなかったし。 「……ねえ」 「どうした? 桐乃」 「ん……やっぱ、こっちで良い」 そう言う桐乃の顔は、少しだけ満足げに見えた。 End -------------
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508 名前:神撃の兄パン:2012/12/04(火) 21 07 16.36 ID 6e44DfjL0 桐乃「あたしのターン!“縦縞の兄パン”をオープン!!」 黒猫「ふっ、その程度の兄パンで私の“意味不明な英単語が書き込まれたパンツ”に勝てると思って!?オープン!」 桐乃「ちょっwww何それ?City boyとか書いてあるんですケド。していぼーいてwww」 黒猫「私の勝ちのようね」 ビリビリビリィ 桐乃「ぐぬぬ、なら次は……」 その後も、室内に蝶の大群が舞うような兄パン! 二人のコレクションボックスには物理的に収容しきれない容積の兄パン!! カーペットは兄パンで埋め尽くされ、 社会の窓の奥に潜みし柄のモザイクがとってかわっていく。 そして、作業の目で折りたたみ続ける京介。 沙織「もうやめてくだされ!京介氏のライフは0ですぞ!!」 聞いてない黒猫 「ついにこのパンツを出すときが来たようね!刮目しなさい!! “お尻の裂けた部分をチューリップのアップリケで補修したパンツをオープン!!」 テンション上がりまくりの桐乃 「うはwwwこりはッ!もう、兄貴のパンツ全滅!!残った履けるパンツは、 このド恥ずかしいパンツしかないッ!恥ずかしいっ、でもっ!!!!――なーんて、ねっ!」 黒猫「ちょっと。何故貴女がいそいそとパンツを脱ぎはじめるのよ!!?」 桐乃「最終兵器パンツをオープン!男物のパンツ、全部洗っちゃった。 てへぺろ☆(・ω )で履かせたあたしのパーンツ!!!どーよ、これ!」 黒猫「なっなっな゛っ……ッ???」 沙織「きりりん氏はどうして、それを履いていなさったの!?でござるかッ!!?」 ----------
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437 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/25(金) 21 23 51.55 ID Y+4lmUS70 4人で歩いてて京介と遭遇 桐乃・ドキッと赤面 あやせ加奈子・察し ランちん「えっ?なに?なに?」 443 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/25(金) 22 04 08.84 ID nedjNCFDO 437の後 加奈子「桐乃のやつ、実はすっげーブラコンなんだぜ」 ランちん「えー、ほんと!?」 桐乃「ぶ、ブラコンなんかじゃないってば!京介がアタシのこと大好きなだけ!」 あやせ「…残念だけど、桐乃もお兄さんのことすっごい好きだと思うよ」 桐乃「あ、あやせまで!」 ランちん「マジで~!?そっかそっか。 それじゃ将来、お兄さんに彼女とかできたら大変だねw」 桐乃「………え?」 ランちん「桐乃のほうもカレシとか作ったらお兄さんに怒られたりしてw」 加奈子「オイオイ。おめー話聞いてたか?桐乃は兄貴のこと…」 ランちん「ブラコンなんでしょw いいな~。大好きなお兄ちゃんがいて~。うらやましい~。 将来、桐乃のカレシもそういう人がなるのかな~?」 桐乃「………」 あやせ(今、感じる感覚は…ランちんは白の中にいるってこと… 桐乃は黒! ランちんは白! 黒と白がはっきり別れて感じられるわ…) 483 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/26(土) 06 25 29.93 ID p2TyvJLy0 443の後 ランちん「桐乃~お兄さんに彼女ができたんだって?桐乃もこれから大変だね~」 桐乃「…うん。結構大変。色々我慢しないといけないし…」 ランちん「桐乃も早く彼氏見付けなよ。」 桐乃「…実は、あたしも彼氏できたんだよね。まだ親には内緒なんだけど。」 ランちん「え゛~。そ、それでどんな人なの?」 桐乃「兄貴みたいな…(実は京介なんだけど)」 ランちん「…(やっぱりブラコンだったんだ)…」 ----
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484 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/10/17(月) 16 29 46.57 ID l3vntX4M0 [2/9] 480 親バレを考えたらこうなった。 京介(俺はもしかして、桐乃を女として愛しちまってるのか? 桐乃も満更じゃねえみたいだし…… ……桐乃と二人で生きていくのも、それはそれでいいかも知れねえな。 けどよ、親父たちになんて言えばいいんだ?) 大介「おい、京介。 俺の部屋に来い。話がある」 京介「話?」 大介「………………」 京介(親父、滅茶苦茶怒ってるんだが……一体どうしたんだ?) 大介「……京介、お前とうとう桐乃に手を出したそうだな」 京介「は?」 大介「惚けるな。お母さんに聞いたぞ。 街中で腕を組んで歩いたり、抱き合ったり、人目も憚らずキスしたり、 ウェディングドレスを着せて連れまわしたり、ラブホテルに行ったり、 二泊三日の泊りがけで熱海に行ったりしたらしいな」 京介「親父!それは―」 バキッ 大介「言い訳をするな!見苦しいぞ、京介!」 京介(駄目だこの親父!頭に血が上って人の話を聞きやしねえ! そもそも、泊りがけの旅行なんてしてないって親父も知ってるはずだろ!) 大介「……おい、京介。 桐乃のことは好きか?」 京介「ああ。世界中の誰よりも大好きだ」 京介(まだ、この気持ちがただの兄妹愛なのかはわからねえんだけどな) 大介「そうか……そこまで言うのなら仕方がない。 お前たちの関係を認めてやる」 京介「え?」 大介「血が繋がっていないとはいえ、お前は俺の自慢の息子だ。 お前になら桐乃を任せられる」 京介(え?血が繋がってないって?桐乃を任せられるって? あれ?あれ?) 大介「孫か……桐乃に似て可愛いのだろうな…… 顔を見るのが楽しみだ」フフフ 京介(えー?) 桐乃「お父さん、なんだって? って、どうしたのその顔! すごい腫れてるよ!?」 京介「親父に殴られた」 桐乃「あんた、何かお父さんに怒られるようなことしたの? ほら、こっち来て。手当てしてあげるから」 京介「悪いな」 桐乃「それで、何があったの?」 京介「よくわからんが…… 俺と親父は血が繋がってなくて、桐乃を任せるから早く孫の顔が見たいらしい」 桐乃「なにそれ……わけわかんない」 京介「俺だってわけわからんぞ。 ……だが、桐乃を任せると言われて、悪い気分じゃないな」 桐乃「……シスコン」カァァァ 京介(確かに俺はシスコンなのかも知れねえけどな、それだけじゃなくて……) 京介「……なぁ桐乃、一つお前に言いたいことがあるんだ」 桐乃「なに?」 京介「俺は、おまえを―」 -------------
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840 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/29(月) 23 41 19.12 ID rs2t5Y0A0 [5/5] 【SS】四年後に見る麗しの君 「今日も暑いねー」 俺の隣を歩く麻奈実が、そんなことを言ってきた。 「そうだな。さっさと飯食ってあの涼しい図書館に戻りたいぜ」 俺と麻奈実は朝から図書館で受験勉強していた。 今は昼の十二時。とりあえず家で昼飯を食って、午後からはまた図書館で勉強の予定だ。 「ね、ねえきょうちゃん」 麻奈実が足を止め、真剣な表情で俺を見てきた。 なんだ?もしかして午後の勉強会の都合が悪くなったのか? 「その、もし良かったらなんだけど・・・・・・」 意を決した様子の麻奈実が口を開いたとき、 「京介くーん!」 遠くから俺を呼ぶ声がした。 「うん?」 反射的にそちらを向くと、一人の女性が手を振りながら俺のほうに駆け寄って来た。 女性が走るたびに、後ろで束ねた、少しだけ茶色に染められた黒く長い髪が左右に揺れる。 女性は黒いズボンに薄手のブラウス、灰色のベストとスーツ姿のような、大人を感じさせる格好だ。 その姿を見て、俺の頭に浮かんだ言葉は一つ。 ・・・・・・一体誰だ? 女性は俺のすぐそばまで駆け寄ると、にこりと微笑んだ。 女性はここまで駆けて来たにもかかわらず、息一つ上がっていない。 だが、特筆するべきはそこではなく、その姿だ。 薄く微笑を浮かべながら俺を見るのその顔は、テレビや雑誌を含め、俺が今まで見てきた中で最も美しいといっても過言ではないかもしれ ない。 桐乃なら彼女に張り合えるだろうが、残念ながら方向性が違いすぎる。 桐乃が子供らしさの残る元気一杯の輝きが持ち味なら、彼女はたおやかで落ち着きのある大人の輝きが魅力だ。 比べられるようなもんじゃない。 「京介君、今帰りだよね」 その女性は俺の目の前まで来ると、名乗りもせずにそう言った。 「そ、そうですけど」 やっとの事でそう口にする。 「良かった」 女性はフワリと大人びた微笑を浮かべ、 「じゃあ、ちょっと私に付き合ってくれる?」 「え?」 女性は俺の返事も待たずに俺の手を取る。 「で、でも、俺これから家に帰って飯食わないと」 出来ればこのお姉さんについて行きたい所だが、相手が誰かもわからずにそれはまずいだろう。 俺はなけなしの理性を振り絞って言い訳を見繕う。 「私が奢ってあげる」 女性は笑顔を浮かべながら、きゅっと俺の手を握る。 女性の手の暖かさがさらに俺の理性を削っていく。 「そんなの悪いし、その後麻奈実と勉強があるし」 そ、そう!ここには麻奈実もいるんだ。 約束もしてるし、デレデレし過ぎてついていくわけには行かないだろう。 俺が助けを求めるように麻奈実を見ると 「いいよ、きょうちゃん行って来なよ」 麻奈実は笑いながらそう言った。 「へ?」 「え?」 俺と女性の声が重なる。 どうやら麻奈実のこの反応は女性にとっても意外だったらしい。 「いいの?」 女性が麻奈実に尋ねる。 「いいよー。 だって、きょうちゃんを誘いたくてそんなにおめかししたんだよね?」 麻奈実がニコニコと笑う。 俺といたくておめかし?それじゃあまるでこの女性が俺に気があるみたいじゃねえか。 「・・・・・・うん」 女性が小さく頷く。 え?マジなの? 「それならきょうちゃんを貰っていってもいいよー」 貰っていくって・・・・・・俺はモノじゃないだろ。 「・・・・・・わかった。 じゃあ後はよろしくね」 「うん。おばさんにはちゃんと言っておくから。 だからきょうちゃんとめいっぱい楽しんできてね?」 この女性はお袋のことを知ってるのか? ってことは麻奈実とこの女性は家族ぐるみの付き合いなのか? 「それじゃあ行くよ、京介君!」 何も把握できない俺の手を女性が引っ張る。 おい、結局俺の意見は無視かよ。 「それじゃあ頑張ってね、『お兄ちゃん』!」 女性に連れ去られる俺を、麻奈実は手を振りながら見送った。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 俺と女性はなにを話すでもなく、レストランのテーブル越しに見詰め合っていた。 結局俺は女性の誘いを断ることが出来ず、のこのことこんなところまでついて来てしまったのだ。 ちなみにこのレストランは、桐乃が気に入りそうな、結構高めのイタリア料理店だ。 初対面の女性に奢られるのは気が引けるが、生憎ながら今の俺には持ち合わせがないし、 女性が持っているバッグも、財布も、桐乃が持っているのを見たことがある、かなり高級なヤツだ。 問題ないだろう。 「・・・・・・」 改めて目の前の女性を観察する。 年齢は俺より少し上、女子大生だろうか。 まあ、桐乃みたいに大人びて見える可能性もあるから、俺と同い年くらいの可能性はある。 顔は少し丸顔だが、それでも可愛らしいというより、美しい、麗しいと言う言葉が良く似合う。 穏やかな雰囲気だが、その両目からは強い意志を感じる。 それでいて、目元を飾る銀色のアンダーレムの眼鏡が知性的な印象を与えている。 薄く微笑が浮かべられた口元を彩る紅が色っぽい。 身長は桐乃より1~2cm上といったところだろうか。 胸の大きさも少し上、全体的に桐乃よりも女性らしいラインだ。 少し茶色に染めてあるロングの黒髪。落ち着きのある風貌。知性を感じさせる瞳。優しげな微笑。力いっぱい抱きしめたくなるような身体 。 まずい。メチャタイプだ。さっきから心臓の高鳴りが押さえられん。 気を抜くと土下座して求婚しちまいそうだ。 もし桐乃が大人になり、落ち着きが出たらこんな女性になるんじゃないだろうか。 ・・・・・・もしそうなったら世の中の男共は桐乃を放ってはおかないだろう。 今のうちに対策を取っておかねば。 「ねえ」 「はい!?」 目の前の女性に話しかけられ、俺は素っ頓狂な声を上げた。 その様子に女性はクスリと笑い、 「ねえ、今の私ってどうかな?」 身体を見せ付けるように動かした。 「どうって言われても・・・・・・」 あまりに眩しすぎて直視できず、目をそらす。 今の俺の顔は真っ赤に染まってるだろう。 「その、可愛い?」 そんな、誰もが見蕩れるような微笑を浮かべられては答えは一つだろう。 「可愛―とても綺麗で魅力的です」 顔を逸らしながら答える。 なぜかはわからんが、『可愛い』って言葉は禁句な気がしたため、他の言葉を見繕う。 「ふーん」 女性は嬉しそうに言う。 「じゃあさ。 京介君、私の彼氏になってよ」 「え?」 今、この女性はなんて言った? 言われた言葉を理解できずに戸惑う俺を置いて、女性が言葉を紡いでいく。 「京介君は気づいてなかったと思うけどね、私さ、京介君のことずっと好きだったんだ。 十年以上の間、ずっと」 え?俺とこの人ってそんな昔からの知り合いなの? からかわれてるのかと疑ってみるが、目の前の女性の顔を赤くし恥ずかしがる姿は、どう見ても演技には見えない。 「だから、私のこと少しでも好きなら・・・・・・彼女にしてくれると嬉しいな」 こんな美人に告白されるなんて、今まで生きてきた中で五指に入るくらいの嬉しいイベントだ。 俺の口から『結婚してください』と言う言葉が出そうになったとき、 脳裏に桐乃の姿が横切った。 「・・・・・・ごめんなさい。 俺はあなたとは付き合えません」 意識する事もなく、自然にそんな言葉が出た。 「・・・・・・なんでか、聞いてもいいかな?」 女性の声は震え、心なしか顔も青く見える。 ショックを受けたんだろう。 ・・・・・・なら俺も、正直に答えなくちゃいけないよな。 「すみません。 妹に彼氏ができるまで彼女は作らないって、妹と約束してるんで」 深々と頭を下げる。 「妹―桐乃ちゃんと?」 桐乃のことは知ってるみたいだな。 「はい。俺が彼女を作ったらあいつが泣くから、俺は彼女を作らないんです」 「そっか・・・・・・」 顔をあげて女性を見ると、女性は肩を震わせながら俯いていた。 ひどく悲しんでいるんだろう。 こんな綺麗な人を、俺に好意を持ってくれてる人をそんな感情にしてしまった事に、心が痛む。 「じゃあ、桐乃ちゃんが私たちの中を認めてくれたらどうする?」 桐乃が認めてくれたら? それならこの女性と付き合うことに問題はないはずなんだが・・・・・・ 「それでも、桐乃が彼氏を作るまでは待ってくれませんか?」 俺はそう答えた。 「俺は桐乃の兄貴だから、俺にとって一番はあいつだから、 あいつがちゃんと一人でやっていけるようになるまで、俺はずっとあいつの側であいつを守り続けなきゃいけないんです」 この考えが理解してもらえるとも思わない。 第一、俺自身なんでこんなことを思っちまうのか理解できてないんだからよ。 「そうなんだ」 俯く女性の震えはますます大きくなっていく。 くそっ。俺もこんな美人を悲しませたくないんだがな。 でも、桐乃が一番大事なんだから仕方がないだろ? 「もし、桐乃ちゃんに恋人ができたら、京介君はどうするの?」 もし桐乃に恋人ができたら? そんなの考えるまでもないだろう。 「泣きます。全力で」 俺はきっぱりと答えた。 女性は顔を上げると、きょとんとした表情を俺に見せた。 そしてしばらくするともう一度俯き、前よりも肩を大きく震わせる。 む?俺何か変なこと言ったか? 「私が聞いたのはそういうことじゃなくて、桐乃ちゃんが誰かと付き合い出したら、私と付き合ってくれるかってことなんだけど」 「あ」 そうか、そうだったのか! そりゃそうだよな。 桐乃に恋人ができたときの俺の反応なんて知りたいはずないよな。 さて、俺が桐乃と離れられるようになったら、俺は一体どうするか・・・・・・ 「えっと、そうですね・・・・・・ 桐乃に恋人が出来たらひとしきり泣いて・・・・・・ その後あなたに結婚を申し込みます」 うむ。桐乃に負けず劣らないパーフェクトビューティーに好きだと言われているんだ。 求婚するのは男として当然の行為だろう。 「~~~~」 女性は言葉にならない声をあげると、テーブルに突っ伏した。 もう肩どころか背中のほうまで震えてしまっている。 ・・・・・・仕方ねえよな。好きだった男が、こんなにシスコンだったんだもんな。 ショックで気を失いそうになる気持ち、分かる気がするぜ。 俺も好きな相手が重度のブラコンだったらひくもんな。 「あの、平気ですか?」 だからと言ってこのままほうっておくわけにも行かない。 俺は泣き崩れた女性に手を伸ばした。 しかし俺の手が女性に触れる直前、彼女は顔を上げ― 「あんた、あたしのこと結婚したいくらい好きなのに、妹のほうが大事だから諦めるの? このシスコン、マジキモーい!」 面白くて、楽しくてたまらないといった表情でそう言った。 「は?」 俺はわけがわからず、そんな言葉しか口に出来なかった。 あれ?泣いてたんじゃないの? 女性の顔を注視するが、目が赤くなっていたり、涙の跡があったりということはない。 まさ、さっきから肩が震えていたのは、笑いを堪えていたからだったのか!? と、なると、この女性は俺に好意なんか持っていなくて、ただからかわれているだけだとか・・・・・・ 俺がそんなことを考え始めたことに気がついたのか、女性は首を傾げ、 「あんたさ、まだ気がついてないの?」 と言うと、後ろで束ねた髪を解き、眼鏡を外し、鏡を見ながら前髪を整え、最後にどこかで見たヘアピンで前髪を留めた。 「どう?」 そう言う彼女の顔は― 「おまえ、桐乃か!!」 目の前の顔は、いつもより大分大人びてはいるが、見間違えようのない、 先ほど交際を断る理由とした俺の妹―桐乃だ。 「その通り! ・・・・・・あんたさ、マジで気がつかなかったの?」 桐乃はジト目で俺を見る。 「分かるわけねえだろ! 俺より年上だと思ってたんだぞ!」 なに?女ってメイクでここまで変わるもんなの? ありえねえだろ。 「ふ~ん。 一番大切だって言ったのに、それでも気がつかないんだ。 本当にあたしのこと一番だと思ってるの?」 「う”。 それを言われるときついけどよ・・・・・・ でもよ、お前が一番だって言うのはホントだって」 「どうだか。 今だってあたしだって気づいてないのに、鼻の下伸ばしてホイホイ付いて来ちゃうしさ」 「そ、それはだな・・・・・・」 男っていうのはそんなもんだとか、麻奈実が許可したからだとか、そもそも断ったけどお前が無理やり連れてきたんじゃないかとか、 色々言い訳は思いつくが、どれを言っても火に油を注ぎそうだ。 「なんてね。 京介があたしのこと一番に思ってくれてるのは、さっきのでちゃんと分かったからさ」 桐乃はそう言うと、微かに頬を染めながら、そっぽを向いた。 そうか・・・・・・分かってくれたか・・・・・・ 内心でほっとため息をつく。 一息ついて落ち着くと、今度は疑問が浮かび上がってきた。 「おまえさ、なんでそんな格好してんの?」 そもそも桐乃がそこまで化けてなきゃ、すぐに気がついたんだぞ。 なんでこんなことになったのか、その理由を説明してくれ。 「この格好? 今日知り合いのメイクさんに誘われて遊びに行ったんだけどさ、普段しないメイクをしてみようって話になって、 大人っぽいメイクをしてもらったんだ。 あたしも鏡見て驚いちゃった。 前から大人びてるって言われることあったけどさ、どう見ても大学生くらいなんだもん。 やっぱりプロのメイクさんてすごいよね」 朝からいないと思ってたら、遊びに行ってたのか。 それにしてもプロのメイクさんすごいな。 メイクさえしてもらえれば俺や麻奈実の地味面もちょっとはマシになるんかね。 「でもよ、体格まで変わってねえか? 背も高くなってるし」 「せっかくだから、徹底的に凝ってみたの。 背丈はヒールでごまかしてるし、肩とかお尻のラインとかもパット入れたりして変えてるんだよ」 「なるほど。 その三センチくらい大きくなった胸もパットか」 俺の言葉に、桐乃は胸を隠し、 「妹の胸凝視すんな、この変態シスコン!」 「してねえよ!」 凝視しなくても、普段見慣れてる桐乃のサイズと違ったらすぐに気がつくだろうが。 「た、確かにパットは入れてるよ。 もっと大きくしたかったんだけど、ラインが不自然になるし、メイクさんもこれくらいがちょうどいいって言ったの。 ・・・・・・本当はもっと大きくして、あんたがだらしなくあたしの胸に釘付けになるところを見てみたかったんだけど」 「釘付けになんかならねえよ!」 多分だけどな! 「大きければ良いってもんじゃねえの。 メイクさんが言ったとおり、少し大きめなそれくらいがちょうどいいんじゃねえか?」 桐乃は一度自分胸に視線を向けた後俺を睨みつけ、 「変態」 と言った。 あれ?褒めたのに何で怒られてんの? 「それでせっかくだからあんたをからかおうと思って、このままの格好で帰ってきたの。 バレにくいように眼鏡かけたり、髪形変えたりしてね」 その結果がこの有様か。 ところで一つ気になったんだが、 「なあ桐乃、もし俺がおまえの彼氏になるって言ってたらどうなってたんだ?」 考えるだに恐ろしいが、一応聞いておきたい。 「そ、それは・・・・・・」 桐乃は顔は俺のほうへ向けつつ、視線は外しながら、もごもごと言いにくそうに、 「口にしたことの責任は取らせたに決まってるじゃん」 口にしたことの責任か・・・・・・ 「思いとどまってよかったぜ」 心底そう思う。 「え? ・・・・・・嫌だった?」 桐乃が心配そうに訊ねてくる。 「当たり前だろ? どうせ『彼女を作らないっていうあたしとの約束を破った罰だから』とか言って、エロゲを買いに行かされたり、 エロゲのクリアを命じられたりしたんだろ?」 ・・・・・・あれ?罰じゃなくてもいつも命じられてね? 「そ、そうかもね!」 桐乃はどことなくほっとした様子でそう言う。 そしてすぐに表情をにんまりとしたものに変え、 「けど、全然あたしだって気づかなかった罰はあるから」 「げ、マジかよ・・・・・・」 まあ仕方がない。 桐乃だって言うことを気づかなかったのは事実なんだからな。 「それで、俺は何をすればいいんだ?」 桐乃はあのときに見たのと同じ、大人びた微笑を浮かべ 「ここに来る前に付き合ってって言ったでしょ? 今日一日はずっと一緒にいるんだからね!」 「それじゃあ京介君、次はスィーツショップに行くからね」 そういうわけで、俺は桐乃とデートしていた。 この前の偽彼氏の時とは違い、今度は桐乃が俺をエスコートしている。 髪形も戻して眼鏡もかけたし、俺のことを京介君と呼んで自分のことを私って呼ぶし、 どうやら俺を弟扱いしてるみたいだな。 それにしてもスィーツショップねえ。 この通りからすると、前にデートのときに言ったあそこか? 男だとあの雰囲気には耐えられんのだが、仕方がないか。 ・・・・・・あれ?なにか、忘れているような? 「この間は普通に食事しただけだけど、本当はカップル専用のメニューがたくさんあるんだよ。 私食べてみたいのがあるから、それにするからね」 げ。カップル専用かよ・・・・・・ 一本のスプーンでパフェを食べあったり、二本のストローでジュースをちゅーちゅーしなきゃならんのか・・・・・・ まあ、反対しようにも持ち合わせのない俺が意見できるはずもないんだけどな。 そんなことを考えて歩いていると、後ろから声をかけられた。 「あ、お兄さん」 この素敵ボイスには聞き覚えがある。 毎日朝昼晩と聞きたくなるような、ラブリーマイエンジェルの声だ。 だが、今ここで会いたくない人物ナンバーワンでもある。 俺は冷や汗をかきながら、ゆっくりと振り向いた。 「あ。あやせじゃん」 俺の隣で桐乃がその名を呼ぶ。 その通り、俺に声をかけてきたのは全日本加奈子埋葬選手権第一位の新垣あやせたんだ。 隣には加奈子もいる。 忘れてた。あのスィーツショップなら桐乃の知り合いに会う可能性が高いじゃねえか! やばい、お洒落した桐乃とデートをしていると思われたら、俺の寿命は今日限りかもしれん。 「・・・・・・お兄さん。 その隣の女性は誰ですか?」 あれ?もしかしてこいつが桐乃だってバレてない? こいつ、桐乃の親友なのに、桐乃だって気づいてないのか? それってどうなんだ。 ・・・・・・まあ、俺も人のこと言えないけどよ。 とにかくデート相手が桐乃じゃないと思っているなら何とかなるだろう。 「こいつはだな、えーっと」 「京介君と付き合ってるリノです。 よろしくお願いしますね、あやせちゃん」 何を思ったのか、桐乃はにこりと笑うと、あやせにそんな挨拶をした。 「ちょ、おまっ!」 桐乃に小声で問いかける。 「なに? 嘘はついてないよ」 確かに今日一日付き合うって言ったし、おまえは『妹空』の作者の『リノ』だけどよ!? 「お兄さん、本当ですか?」 あやせが俺に問いかけてくる。 なんだか、その瞳からは虹彩が失われているような。 「そ、それはだな」 「私、嘘は言ってないですよ。 ね、京介君」 桐乃は悪戯っぽく俺に笑いかけてくる。 「それとも、何か問題があるのかな、あやせちゃん?」 そして、そのままの笑顔をあやせに向ける。 待て。それ以上あやせを挑発するんじゃねえ! 「・・・・・・あなた、誰なんですか? 私のこと知っているみたいですけど」 「あやせちゃんのことは良く知ってるよ。 読者モデルだってことも、桐乃ちゃんの親友だってことも、嘘つかれるのが嫌いだってことも」 不機嫌そうに警戒するあやせに対して、桐乃は笑みを浮かべたままだ。 しかし、その笑みはどことなくぎこちないような。 ・・・・・・まさか、俺が桐乃だって気づかなかったから怒ったみたいに、あやせに気づいてもらえなくて怒ってんのか? 「お兄さん、黒猫さんという方と別れたと思ったら、今度はこの人と付き合い始めたんですか? 確かに同姓の私でも見蕩れてしまいそうなほどに綺麗で素敵な人ですけど・・・・・・ お兄さんは桐乃に彼氏ができるまで誰とも付き合わないって約束したんじゃないんですか!?」 え?なんであやせまでその話知ってんの? 黒猫と分かれたことはともかく、桐乃に彼氏ができるまでは恋人を作らないって話を麻奈実が話したとは思えねえし、 まさか桐乃があやせに喋ったのか? なんで俺のことを『妹を愛して止まない変態妹婚上等兄貴』だと勘違いしてるあやせにそんなことまで話すの!? 「桐乃ちゃんからの許可は貰ってるよ。 兄貴は頼りないからちゃんとリードしてあげてねって」 まあ、おまえから誘ってきたんだし、許可は取ってあるようなもんだよな。 そして今回はリードしてもらってるから嘘じゃねえし。 「え? あの桐乃がお兄さんと付き合うのを許可したんですか? 一体どうやって・・・・・・」 あやせがショックを受けたように目を大きく見開く。 「それに京介君とは最近一つ屋根の下で暮らしてるし・・・・・・ 今日だって一緒に寝る予定だよ」 確かにずっと前から一つ屋根の下で暮らしてるけどよ!? さらに誤解を深めるような発言するんじゃねえ! それに一緒に寝るのくだりは流石に嘘だろうが! 「ま、まさか親の公認だなんて・・・・・・」 あやせは桐乃の言葉に衝撃を受けたようだった。 今にも『orz』のポーズをとりそうなほどだ。 これ以上あやせに誤解させると、せっかく『シスコン変態兄貴』だとあやせに勘違いされてるのがどうにかなりそうだし、 それ以上になんだか俺の命が危険にさらされる気がする。 一体どうするか・・・・・・ 俺が悩んでいると、今まで無言で俺たちのやり取りを見ていた筈の加奈子がいつの間にか俺の隣におり、 俺にだけ聞こえるようにそっと囁いた。 「なあお兄さん。 あれって桐乃だべ?」 驚いて加奈子を見ると、加奈子は楽しそうにニヤニヤと笑っている。 「やっぱなー。 加奈子、最近コスプレしてるヤツとかよく見るから、アレくらいなら見破れるようになったんだよね」 なるほど・・・・・・メルルの関係で仮装とか変装とかを見慣れてんのか。 「それにしてもよー」 加奈子が俺と桐乃を見比べる。 「前に比べて、お兄さんと桐乃はちょっとはマシなカップルになってんのな。 まあ、同棲してるとか、一緒に寝てるとかはまだまだ嘘くせえけどヨ」 そういやあこいつ、まだ俺のことを桐乃の彼氏だと思ってんのか。 だがあの中で的確に嘘だけを見抜くとは・・・・・・偽彼氏だって怪しんでいたことといい、結構いい目を持ってるな。 まあ、俺たちのことをカップルだって思ってる時点でまだまだ甘いけどよ。 加奈子が俺に語りかけてくる最中も、桐乃とあやせはなにやら会話を続けている。 俺としてはラブリーマイエンジェルとラブリーマイゴッデス(大人バージョンだと俺に優しくしてくれるので今日限定)の戦いは見たくない んだが・・・・・・ 「なあ今からあのスィーツショップ行くんだろ?」 「そうなんだが・・・・・・どうするか」 「あやせのことは気にしないでさっさと行けって。 後は加奈子様が面倒見てやるからヨ」 「いいのか?」 下手すると埋められるぞ? 「いいって、いいって。 代わりに今度桐乃になんか奢って貰うかんな。 それにまるで気づいてないあやせをからかうのが面白そうだからヨ」 「そうか・・・・・・すまねえな」 馬鹿が、無茶しやがって。 後で思い出したら掘り起こしてやるからな。 「おい、そろそろ行こうぜ」 俺は加奈子に目配せした後、桐乃の手を取りそう言った。 「そうだね。 じゃあ私たちは用事があるから。 またね、あやせちゃん」 桐乃も潮時と考えたのか、特に反抗することもなくこの場を去ることに賛成した。 しかし、 「ちょっと待ってください!」 あやせが俺たちを呼び止める。 加奈子があやせを止められるか?そう考えたが、 「一つだけ言わせて下さい。 まだリノさんのことを認めたわけじゃありませんけど、 お兄さんのことを本当に好きなら、桐乃に認めてもらっているなら・・・・・・ お兄さんのことをよろしくお願いします」 あやせはそう言い、ぺこりと頭を下げた。 そして桐乃は 「・・・・・・うん。 あやせの分も、ちゃんと幸せにするから」 と言うと、ぎゅっと俺の手を強く握った。 あの後俺たちは夕飯ギリギリの時間まで二人であちこち巡った。 帰った後も桐乃はメイクを落とさず、 「ほら、口元汚れてるよ」 などと、食事中もお姉さんぶっていた。 「桐乃もいつかこうなるのか」 と無表情を保とうとしつつも口元がニヤける親父と、 「京介はお姉ちゃん子ねえ」 とニヤニヤするお袋が印象的だったな。 その後は二人で俺の部屋に篭り、勉強していた。 そうなると必然的に勉強は俺のほうが先を行ってるんだけどな。 ゲームではなく、勉強を選んだのは、俺の勉強を妨げちまったのを気にしてるのか、あるいは一緒にゲームでもして地を出すのを嫌った か・・・・・・ まあ、どうせ後者だろうさ。 「・・・・・・それじゃあ、もう遅いしシャワー浴びて寝ようか」 桐乃が少しだけ名残惜しそうに言う。 そうか、これで年上の桐乃を見るのも終わりか。 「・・・・・・今日のあたしどうだった?」 部屋の扉に手をかけながら、桐乃は背を向けたままそう尋ねて来た。 今日の桐乃か。そりゃあ― 「結構よかったぜ。 俺に姉がいたらこうだったのかなって思った」 「そうなんだ。 私も弟な彼氏ができたみたいで楽しかったよ」 「そうか。 でもな」 今日の桐乃は結構優しかったし、綺麗だったし、元に戻るのは少し寂しくはあるが・・・・・・ 「やっぱりおまえは俺の妹だからさ。 今の大人びたおまえは四年後にでも取っておいて、明日からは何時も通りの、桐乃でいてくれよ」 「うん!」 桐乃は振り返ると、昨日も今日も、そしてきっと明日からも変わらない、極上の笑みを浮かべた。 -おまけ- 「ところでさ、一つ京介君に言っておきたいことがあるんだ」 桐乃はこちらを振り返ったまま悪戯っぽく笑った。 「今日の言った事の中で、嘘は一つだけだから」 桐乃はそう言うと、スッと扉の向こうに消えていった。 「嘘は一つだけ?」 流石にそれはないだろう。 今日は色々と嘘を言っていた気がするんだが。 たとえばあやせの時とか・・・・・・でもあの時はギリギリ嘘はついていなかったな。 じゃあどこなんだ? そう考えた時、一つの言葉が脳裏を横切った。 もし、嘘が一つだけなら― 俺が扉を開けると、ちょうど桐乃が自分の部屋から着替えを持ってきたところだった。 「なあ桐乃。今日の嘘は一つだけなんだろ?」 「・・・・・・うん、そうだけど?」 「俺にはおまえの一つの嘘がどれだか分からないけどよ。嘘が一つしかないなら― 今日は一緒に寝るんだよな」 「あ」 俺の言葉に桐乃は顔を赤くする。 まあそうだよな。 今日はずっと桐乃に振り回されていたが、これでようやく一矢報いることができたぜ。 俺は満足して部屋に戻ろうとしたが、それを遮るように桐乃が、 「そ、そうだね。 今日一日付き合ってもらうって言ったんだから、一緒に寝ようよ」 顔をさらに赤くしてそう言った。 「ちょっ! いいのか!?」 想像していなかった答えに、今度は俺が戸惑う。 「これもあたしだって気づかなかった罰だから。 一晩一緒にいたら、今度からはあたしがどんな格好してても気づくでしょ?」 余裕そうな態度で言う桐乃。 メイクが取れていないからまだ大人な態度なのか? 「で、でもよ・・・・・・」 覚悟が決まらない俺に、桐乃は赤い顔で笑みを浮かべ、 「これは決定事項だから。 それと、寝る時もエスコートするのはあたしだから、覚悟しててね?」 -END- -------------
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261 名前:【SS】影送り 1/2[sage] 投稿日:2011/08/06(土) 16 01 18.10 ID VNV1NBp70 [1/3] 「京介、起きて」 身体を揺さぶられる感覚に目を覚ませば、何時かのように桐乃が俺に馬乗りになっていた。 ビンタで起こされなかっただけマシだよな、と思いつつ、ふと違和感を覚えた。 違和感の対象は桐乃の表情。あの時のような不機嫌そうな顔ではあるが、一点だけ違っている。 「おまえ、泣いてるのか?」 少しだけ、目じりに水滴が見えたような― 「~~~~!」 俺の言葉に、桐乃は慌てたように腕で顔をぬぐう。 「平気か?」 身体を起こしながら桐乃に尋ねる。 「うっさい!とにかく早く起きて」 桐乃はそう言うと俺の上から降りた。 俺に見られたくないだろう顔を見られたっていうのに、桐乃はあまり怒っていないようだ。 一体どうしたっていうんだ。 俺は桐乃に言われた通りにベッドから起き上がる。 それと同時に、桐乃が部屋のカーテンを開けた。 今日は晴天だ。青い空が寝起きの目に眩しい。 「ちょっとこっち来て」 桐乃に促され、窓際に立つ。 温かな陽光に体が包まれる。それ自体は気持ちがいいんだが、桐乃の様子がおかしいので気分は良くならない。 「・・・・・・ちゃんと影はある」 影?影がどうかしのか? 「おい桐乃、何のことだか説明してくれ」 「黙ってて」 桐乃はピシリとそう言うと、俺の体を触り始めた。 頭、顔、首、肩、腕、胸、腰、足・・・ そして最後に俺の手を強く握った。 「触れる」 そう言うと、桐乃はふぅと一息ついた。 桐乃が俺の手を握って安心してくれるのは嬉しいんだけどよ、何を心配していたのかわからなきゃ俺のほうが安心できねえじゃねえ か。 「一人で納得してないで俺にも説明しろ」 俺の言葉に、桐乃は言い辛そうに目をそらす。 「・・・・・・言いたくねえなら、無理には聞かねえけどよ。 でもな、俺はおまえの兄貴なんだから、おまえの力になってやりてえんだよ」 俺の言葉に、桐乃はおずおずと視線を俺に返した。 「・・・・・・変な夢を見たの」 桐乃がポツリと話し始める。 「変な夢?」 「うん。あたしと兄貴が公園で遊んでるんだけど、空がピカッと光ったと思ったら、兄貴が影だけ残して消えちゃったの」 「俺が影だけ残して消えた?」 「それでね、あたしはワケが分かんなくてずっと残った影を見てたんだけど、ふと空を見たらその影が空に浮かんでいっちゃったの 」 「・・・・・・」 「怖くなって家に帰ったんだけど、家に帰ってもお父さんとお母さんどころか家も無くなってるし・・・・・・ 寂しくなって一人で泣いてたら目が覚めたの」 それで不安になって俺のところに来て、俺の体と影を確認したのか。 子供っぽいと言っちゃそうなんだけどよ、夢の事を気にして俺を確かめに来るなんて、意外と可愛いと思ってやらなくもないな。 262 名前:【SS】影送り 2/2[sage] 投稿日:2011/08/06(土) 16 01 51.49 ID VNV1NBp70 [2/3] それにしても、今の話どっかで― 『桐乃、いっしょに十まで数えるんだぞ』 晴天の空の下。他に誰もいない公園で。 そこで俺と桐乃は二人で手をつないで地面を見ていた。 『うん! いーち、にーい、さーん』 『しーい、ごーお、ろーく』 『しーち、はーち、きゅーう』 『『じゅう!』』 空を見上げると、空には仲良く手をつないだ二人の影が空に映し出されている。 『お兄ちゃん、すごーい!』 『桐乃、これは『影送り』って言ってな―』 そうか。今日は八月六日だから、そんな夢を見ちまったのか。 「ねえ京介。 京介は黙っていなくなったりしないよね」 桐乃は俯き、俺の手の感触を確かめるように、握ったままの手に少しだけ力を込めた。 「桐乃・・・・・・」 俺たちはずっと無視しあって来たけれど、俺たちはよく喧嘩するけれど、それでもこいつを不必要に思ったことは一度もない。 昔は煩わしく思ったこともあったけど、今はもう離れたいとは思わない。 そう、なにがあっても。 俺の手を握る桐乃の手。その手を握り返す。 「京介?」 「桐乃、俺は黙っていなくなったりしねえから。 もしどこかに行っちまっても、絶対におまえのところに帰ってくるから」 だから、おまえはそんな顔すんな」 もう一度、桐乃の手を握る手に力を込める。 「・・・・・・わかった。 あんたが帰ってくるって言うなら、あたしもずっと待ってるから」 桐乃も、握る手に力を込める。 あの戦争で、一体どれだけの恋人が、親子が、兄妹が、こんな約束を立てたんだろうか。 そして、一体どれだけの約束が果たされたんだろうか。 俺たちは、この約束を生涯守りきれるだろうか。 そんなことを考えながら、握る手に力を込めた。 「京介ー、桐乃ー、ご飯よー」 下からお袋が呼ぶ声が聞こえる。 「それじゃあ下に行くか」 「うん」 桐乃の手を握る手から力を抜く。 でも、握り合う手は放さない。 ご飯を食べたら、二人であの公園に行ってみよう。 そして、あの日のことを話しながら、あの日のように影送りをしてみよう。 空にはあの時のように、仲のいい兄妹が映るだろうか。 -------------
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580 名前:忍法帖導入議論中@自治スレ[sage] 投稿日:2011/10/30(日) 16 31 30.84 ID 7ghRQ8e2P [4/10] 10巻で兄妹のプロフィールスリーサイズ含めて更新されないかなあ そろそろ 1のキャラ紹介じゃズレがでてきてるしw いま京介さんがきりりんのおっぱい触ったら 京介「・・・お前、大きくなった?」 桐乃「(胸元を腕で隠しつつ)へ、変態! 女の子相手に何聞いてんのよ! さっきのことはさっさと忘れなさいっての!・・・ま、まあ、大きくはなったケド(ボソリ)」 京介「なんだって?」 桐乃「な、なんでもないわよバカ!」 みたいなことになるんだろうかw 581 名前:忍法帖導入議論中@自治スレ[sage] 投稿日:2011/10/30(日) 16 46 09.58 ID 4oeSUrwM0 [1/11] 京介が直接スリーサイズを測るイベントか 582 名前:忍法帖導入議論中@自治スレ[sage] 投稿日:2011/10/30(日) 17 55 22.59 ID dTpmhxDR0 [2/3] 581 桐乃「きょ、京介・・・人生相談があんだけど」 京介「桐乃がその言葉使うの久しぶりだな、よし何でも聞いてやるぞ」 桐乃「・・・このシスコン、あとでやっぱダメなんて言わせないかんね」 京介「任せろ!漢に二言はない!」 桐乃「そんじゃ・・・・・あのさ、スリーサイズ測って」 京介「ま、まて、何で俺がそんなことを・・・・・」 桐乃「はあ?あんた今、『漢に二言はない』って言ったじゃん」 京介「確かに言ったが、スリーサイズ計るなんて・・・・・」 桐乃「うっさい、あたしだって恥ずかしいんだから・・・いいから計れ!」 京介「わかった、それじゃ巻尺貸せよ」 桐乃「巻尺ないから・・・・・その・・・手で測って」 京介「なにーーーーー!」 桐乃「あ、あと・・・服着てるとちゃんと計れないから・・・脱ぐから、こっち見ないでね」 までは妄想した。 -------------
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450 名前:【SS】ハートとルージュ 1/2[sage] 投稿日:2011/08/10(水) 16 55 50.82 ID pWa40HLn0 [7/12] 『桐乃、なにしてるんだ?』 『おけしょうー』 『うわ!桐乃、口が真っ赤だぞ!』 『キレイでしょー?』 『キレイじゃなくて変だって。ほら、顔ふけよ』 『そのまえに、おにいちゃーん!』 むにゅ 違和感を覚え夢から覚めると、枕元に桐乃がいた。 ・・・・・・なんか違和感がある。 「あ。やっと起きた」 寝ぼけ眼をこすり隣を見ると、桐乃がなにやら手元をごそごそしていた。 ・・・・・・いやな予感がする。 「おまえ、俺の顔に落書きとかしてないよな」 「え?落書きなんてしてないよ?」 「本当か?額に『妹専用』とか書いてないだろうな」 「書いてないって。 第一、マーキングするまでもなく、あんたがあたし専用だってみんな知ってるし」 何でみんな知ってるの!? 俺がシスコンだという事を、妹を一番大切にする事をカミングアウトしたのって最近だろ? 「ほら、早く起きて洗面所行って来なよ。 ご飯だよ」 桐乃は立ち上がると、そのまま部屋から出て行った。 結局何しにきたんだ? 俺はちゃっちゃと着替えを済ますと、洗面所に向かった。 顔を洗おうと思い、そのまえに備え付けの鏡を覗くと― 「なんじゃこりゃー!」 「あ、おはよう兄貴」 顔も洗わずリビングへと向かうと、お袋と桐乃がすでに食べ始めていた。 待ってくれなかったのか。薄情だな。 「おい桐乃、なんだこのほっぺに書かれてるのは」 俺は洗面所で見た、右の頬に書かれた落書きを指す。 「ハートマーク」 そう。俺の頬には赤くて大きいハートマークが書かれていた。 「落書きしてないって言っただろうが」 「うん、落書きじゃないよ。それファッションだから」 ファッションなのか? むう、俺はファッションの事について詳しくしらんし、対して桐乃はそれの専門家だ。 「わかった。百歩ゆずってファッションだとしよう。 だが何でハートマークなんだ」 「今日は八月十日―ハチとトオでハートの日なんだって」 つまり、ハートの日だから俺にハートマークのプリントをしたと。 「せっかくあたしが書いてあげたんだから、今日一日は消しちゃダメだからね」 おいおい、マジかよ。 「さすがにそれはきついだろ。 お袋からもなんか言ってくれよ」 「あら、いいんじゃない?可愛いし」 しまった!いつだってお袋は桐乃の味方だ! 「ちっ、しょうがねえな。 今日一日だけ我慢してやるよ」 今日は麻奈実との勉強会もない。外出しなけりゃ問題ないだろ。 451 名前:【SS】ハートとルージュ 2/2[sage] 投稿日:2011/08/10(水) 16 56 20.26 ID pWa40HLn0 [8/12] 「今日は八月十日でハットの日、つまり帽子の日でもあるの。だから、今から買い物行くから」 時々鏡を見つつ一人で勉強してると、桐乃が部屋に入ってきてそう言った。 「そうか。気をつけろよ」 このハートマークがなけりゃ俺が付いて行ってやってもいいんだがな。 「は?あんたも来るんだけど」 「勝手に決めんな!大体俺はこのマークのせいで外に出れないだろうが」 「いいじゃん、ハートマーク。可愛いし、見せ付けるようにしてもいいと思うよ。 まあ、皆あんたの事なんか気にしないだろうから、関係ないんじゃん?」 可愛いとかが問題じゃなくてだな、妹に書かれたハートアークを見られるのは恥ずかしいだろうが。 それに俺が地味なのは認めるけどよ、おまえの隣にいたらイヤでも目立つだろうが。 「それともなに? あ、あたしにもおそろいのハートマークを書けって言うの?」 想像してみる。 お互いのほっぺにハートマークを書いて仲良く買い物をする男女。 ・・・・・・ラブラブだ! 「さすがにこれはないわ」 「うん、恥ずかしすぎるよね・・・・・・」 腕を組んでデートしたり、ラブラブツーショットプリクラなら兄妹として普通だけどよ、さすがにこれはないんじゃないか? 「でも、京介がどうしてもしたいなら、あたしのほっぺにハートを書かせてあげてもいいかも・・・・・・」 桐乃がどこからか口紅を取り出し、フタをはずすと俺に渡してきた。 なんだ?もしかして書けって言ってるのか? ラブラブカップルはまずいだろう。いや、たしかにもうちょっと桐乃と仲良くなりたい俺としては、 周りに仲がいいのを知ってもらうためにちょうどいいというか― そう考えたときに、ふと気がついた。 「そういえば、今日のおまえの唇、いつもより色が濃いな」 いつもの透明感あふれるローズピンクの唇より少し赤い、ローズレッドといった感じだ。 朝起きたときに覚えた違和感の正体はこれか。 「え?」 「いつもはリップクリームをつけてるだけみたいだけどよ、今日は口紅をつけてるのか?」 それにしてもこの色、どこかで見たような― 「ああ、この口紅と同じ色で、俺のほっぺのハートと同じ色なのか」 なるほど。すぐに口紅を取り出せたのは、朝に俺のほっぺに落書きした後、ずっとこの口紅を持ってたからか。 「~~~!あ、あんた、ほっぺに間接キッスとか考えてるんじゃないでしょうね!」 桐乃が顔を赤く染めながら俺に詰め寄る。 「そんなこと考えてねーよ!」 どうせ新品の口紅を買ったから、遊びに俺のほっぺに落書きしただけだろ? 使った後に俺のほっぺに落書きするわけないもんな。 「とにかく、『間接キス』なんかじゃないから」 そんなに強調しなくったって考えねえよ。 「ふん。なんだか白けちゃった。 もうあたしのほっぺにハートマーク書かせてあげない」 桐乃はそう言うと、俺から口紅を取り上げた。 少し残念な気もするが、これでよかったんだよな。 「あとムカついたから、今日は帽子だけじゃなくて色々見て回るからね」 買い物に付き合うのは決定事項か。まあ、ほっぺのハートは恥ずかしいが、桐乃と一緒にいるための料金だと思えば安いか。 「それじゃあ行くよ」 桐乃は俺の手を取り立ち上がらせる。 「はいはい」 俺は机の上においてある財布を手に取り、最後に一度だけ鏡に視線を向けた。 ―遠い昔、こんな風にほっぺを赤くした事があったような― 「なにしてるの?早く行くよ」 桐乃に促され、俺は郷愁感を残し部屋を出た。 『なにをするんだよ、桐乃!』 『えへへ~ これでおにいちゃんは、きりのせんようだからね!』 -------------